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被爆ピアノの音色

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東北芸術工科大の特別授業及び、被爆ピアノコンサートで
山形へ行って来ました。
今回被爆ピアノを弾かせて頂くのは初めて。
そして大学で講義をさせて頂くなんて事も初めて。
初めてづくしの旅となりました。

芸工大の推進する「芸術平和学」の授業。
音楽を通じての僕たちの活動のお話と、
被爆ピアノを全国各地へ持ち運び平和コンサートを
していらっしゃる調律師で、広島から被爆ピアノ(ミサコのピアノ)を
運んで下さった矢川光則さんのお話、最後にそのピアノを使わせて頂いて
ワークショップという流れの80分。合計2コマ、600人の生徒の皆さんと
一般参加の方々で、教室は埋め尽くされました。

初めて弾かせて頂く被爆ピアノ。
授業前、教室に運ばれたそのピアノを前に
まず弾こうと思っていたのは、
ドキュメントフィルム No More Hiroshima No More Nagasaki のために作曲したテーマ曲。
どんな音がするんだろう。どんな事を僕は感じるんだろう・・・

弾き出した瞬間、明るく優しい音色が溢れ出しました。
昭和7年のピアノ。普通にしててもアンティークの域。
良く鳴る。それにしてもとても元気な音色。
今までに色んなピアノを弾かせて頂いてますから、そのピアノの
特徴や、どのように扱われて来たのかといった事はある程度
弾いた時に分かります。とても大切に、色んな人たちが弾いて来た
思いが詰まってる音がしました。

それにしても、このピアノは82歳のアップライトピアノ。
そして何より、1945年の8月6日。あの爆風の中をもくぐり抜けて来たピアノ。
あの日、すべてを焼き尽くし、すべてを吹き飛ばしてしまったかのように思えた
原子爆弾。人の思いだけは決して奪う事は出来ない事を証明するかのように。
悲劇にも引き裂く事の出来ない、人の優しい思いを今に力強く届けてくれる音色でした。
また今ここから始まる出逢いに感謝。

講義の最後にこのピアノでワークショップ。
平和への思いを音で感じる即席セッション。
あえてピアノを弾いた事無い方に出て来て頂き、その場でメロディーを作って頂き、
僕が伴奏、アレンジを加えて、皆さんにはコーラスをして頂くというもの。
誰でもその場でピアノが弾けるようになる独自のメソッドをお教えして、
あっという間にみんなで曲が出来上がりました。
とってもうまくいった!やっぱりこのピアノはマジックだ。
みんな音で体感する事が出来ました。

217本のピアノ弦のうち、切れていた2本だけが新しいもので、その他はオリジナル。
ガラスが刺さって付いた傷もそのまま。
普通に今でも演奏出来る事、その普通がどれほど凄い事なのか。
ありふれた日常の中にあった人々の大切な思いは、今このピアノによって
今へと届けられ、感じる事が出来るのです。
また弾きたいな。このピアノ。

by hiroshiurushido | 2014-07-29 01:14 | 音楽